先日の簡単な感想を書いてから数日、いろいろとBitwig Studioを触ってみました。
今回は様々な機能の中から、Bitwig Studio からの視点で「比較するならこれは知っておいて!」という機能を独断と偏見でお届けします(笑)
このいずれかに感銘を受けたら、あなたはBitwig Studioを買うべきかも!?
もちろん Bitwig Studio の欠点や Ableton Live とのコンセプトの違いについても触れていますので是非ご覧ください。
まずは1点目。Ableton Live ユーザーにはなじみ深い “クリップ” が Bitwig Studio にもあります。Bitwig Studioでは、このクリップの中で波形編集が出来てしまいます。画像を見ていただくと分かりますが、サンプリングCDから持ってきたループをザクザク切ってみたり、ピッチを部分的に変えてみたり、消してみたり、反転させてみたりしています。
Ableton Live あればアレンジメントに並べて行う作業が、なんとクリップの中で完結してしまうのです。通常のDAWでいうと、一つのオーディオリージョンの中で波形編集ができてしまっている、という感じですかね。リージョンの中にリージョンがある?みたいな。サンプリングCDの素材などをイジって遊ぶにはもってこいの機能です!
2点目はこちら。Bitwig Studio では打ち込んだ音源を即座に “バウンス(オーディオ化)” することができます。しかし、これが普通のバウンスではありません。通常ならバウンスされた音は別トラックに書き出されたりするのですが・・・画像をご覧ください。なんとMIDIクリップとオーディオクリップが一つのトラックに共存しているではありませんか!これを「ハイブリッドトラック」と呼んでいるようです。
「かっこいいドラムループができた!」
「あ。最後のシンバルだけ反転させたいな〜」
「じゃ、まずはドラムループを別のオーディオトラックに書き出して・・・と」
・・・なんて作業が必要ありません。必要な場所だけをバウンスしてしまって、その波形を “その場で” イジってしまえばいいのです。
ちなみに通常のバウンスだと、トラックにかかっているエフェクトも適用されてオーディオ化されてしまいますが、Bitwig Studio の “Bounce in Place” ですと、あくまで「MIDIクリップがオーディオ化」されるだけなのでトラックにかけてあるエフェクトは適用されません。コンプのかかり具合やEQの微調整などが、MIDIクリップとオーディオクリップが混在したトラック1本で行えるのは嬉しいですね!
3点目はモジュレーターの標準装備です。シンセではよくLFOを使ってカットオフなどをグイングイン動かしたりしますが、このモジュレーターがあればシンセの中で作業するのではなく、トラックに内包されている様々なプラグイン(EQ・フィルター・ディレイなどなど)のパラメーターを動かすことができます。Ableton Live の「Max for Live」があれば今までも同様のことが出来たのですが、それが標準装備というのは素晴らしいことですね!
写真では、1つ目に見えるステップシーケンサータイプのモジュレーターで Omnisphere のカットオフやシェイプを動かし、同時にLFOタイプのモジュレーターでゲートのスレッショルド、フィルターのカットオフなどを動かしています。表現の幅が大きく広がりそうですよね。
最後の4点目は個人的な好みなのですが、挿入してあるプラグインが見やすいということ(笑)画像をご覧頂くと分かりやすいと思うのですが、各トラックにかけてあるEQやコンプなどが一目で分かります!これってミックスの段階になると、けっこう重要だったりします。Ableton Live ですと、それぞれのトラックを個別に選択してプラグインの状態を確認する必要があるので、時々面倒に感じることが・・・。先日の感想でも書いた「インスペクタ」の存在も大きいですね。
以上、僕が Bitwig Studio を触っていて「Ableton Live とはココが違う!」と感じた機能の紹介でした!
とはいえ Bitwig Studio が完璧と言えるかというと、もちろんそうではありません。Ableton Live と比較すると、まずトラックの “グループ化” がありません。扱うトラック数が多いユーザーにとって、これはけっこう痛いかもしれませんね。ソフトウェア音源の場合、とくにKONTAKTといったマルチティンバー音源になると、グループ化してまとめたりしますから、若干効率が悪くなってしまいます。
そして次に拡張性。Ableton Live には専用のハードウェアコントローラーやiPadアプリなどが多く存在し、一つのカルチャーとして成り立っています。僕は Ableton Live のコントロールにiPadアプリである「touchable2」を使っているのですが、これが最高なんですよ!この辺りは Bitwig Studio が後発のアプリケーションなので仕方のないことですが、今後の Bitwig社 のマーケティングに期待したいところです。
あと Bitwig Studio はビデオの読み込みに対応していません。これは特定の人にしか影響はないと思いますし、今後のアップデートで追加される可能性はありますが、個人的にビデオをよく扱うので気になりました。
あ。あと Bitwig Studio は現在のところ日本語には対応してません。Ableton Live はもちろん対応済み!しかも便利なインフォビュー付き。
では最後に、どちらを選ぶべきか?という点です。
Bitwig Studio と Ableton Live は必ず比較されますが、実はコンセプトが大きく異なるように思っています。
Ableton Live は名前の通り、ライブパフォーマンスでの使用や、そのパフォーマンスから偶発的に生まれたフレーズなどを活かして制作をするタイプ。トラックをグループ化するなどして効率化を計ったり、環境設定でインターフェースの拡大率を変更してステージ上での視認性を上げることもできます。
対して Bitwig Studio は柔軟なインターフェースではあるが、どちらかというと腰を据えてじっくり楽曲と向き合うタイプのアプリケーションという感じです。今回取り上げたようにエディット面の機能が斬新であったり、表示される各トラックの情報量やボタンが多い、3枚までのマルチディスプレイが可能だったりと、制作向けのコンセプトであることが感じられます。
どちらも本当に面白いアプリケーションなので、この記事が少しでもお役に立てたら幸いです!